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高齢者・口腔保健・ガイドライン

高齢者・口腔保健・ガイドライン

Ⅰ.研究の全体像と本研究の目的

1.研究の全体像

1)在宅療養にて「食」を進めるためのアセスメント・モニタリングシステムの開発
既存技術の改善により、非侵襲的/弱侵襲で簡易な咀嚼嚥下機能を測定する装置を開発し、本装置を軸として、支援者が容易にモニタリングしアセスメントできるシステムを開発する。

2)訪問看護師を対象とした「食」の支援教育プログラムと生活支援モデル案の作成
国内外の関連文献を検討し、「食」を支援する訪問看護師用の教育プログラムを作成する。そして、在宅療養高齢者の「食」に対して先駆的な取り組みをする訪問看護ステーションにつとめる看護師への聞き取り調査から、在宅療養高齢者の生活支援モデル案の作成を行う。

3)以上、1、2の結果から、作成した生活再構築支援モデルの実施・評価を行い、そのモデルの精錬と汎用化の検討を行う。

 

Ⅱ.在宅療養にて「食」を進めるためのアセスメント・モニタリングシステムの開発

咀嚼嚥下運動の鍵を握る舌運動を解明するために顎の複数の筋活動情報を取得し、非侵襲的で簡易な咀嚼嚥下機能を測定する装置を試作した。

 

Ⅲ.訪問看護師を対象とした「食」の支援教育プログラムと生活支援モデル案の作成

1)目的: 超高齢社会の到来に伴って,疾患や加齢等により安定した経口摂取が困難な患者が多くなり,食支援を必要とする 高齢者は急増しているが,在宅ケアの要である訪問看護師が主体的に取り組む食支援に関する研究は少なく,ほとんどが事例報告である。そこで本研究では在宅での生活支援の中で,訪問看護師がどのような食支援を行っているの か,その実際を明らかにするために調査を行った。

2)方法: 食を支援するための具体的な看護実践を明らかにすることを目指しているため,調査対象は食への支援を積極的 に展開している訪問看護ステーションに勤務している訪問看護師とした。この訪問看護師に対して,グループインタ ビューを行った。インタビューデータより食支援の内容を読み取り,類似性に従って分類した。

3)結果および考察:5名の訪問看護師からデータが得られた。生活支援の中での食支援として,食支援を積極的に行っている訪問看護 師は「その人らしく生きる食支援」を行っていた。訪問看護師が行う食支援は【食に対する看護師の思い】を根底に おきつつ,療養者と家族の意思を尊重することを基盤にしてケアを行っていた。そして,在宅ケアの特徴を踏まえて 【高度なアセスメント】【食に対する全人的なケア】【包括的な食支援のための多職種連携】【連続的な評価】という 取り組みを展開していた。

これをうけて、モデル案が作成された。

成果:在宅での生活支援の中で行われる食支援の実際 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要、24、27-41.

 

Ⅳ.「食」を契機とする在宅療養高齢者の生活支援モデル実施

1.本研究の概要

図1に示すように、初回調査を経て情報を収集したのち、調査結果に基づき「食」の改善を主眼としたプログラムを在宅療養高齢者および家族、訪問看護師へ提案し、実施可能な内容を協議した上で3カ月間実施していただく。それらの実施が可能なように介入前、介入1か月後、介入2か月後、計3回訪問看護師を対象とした講習会と、月1回計5回のケース毎にコンサルテーションを行い、問題がある場合にはその改善策を訪問看護師と検討する。介入3カ月後と6カ月後にその効果を1)食事摂取状況、2)口腔機能、3)全身状態、4)活力の点から評価する。

 

図1 研究の概要

 

2.対象および方法

1)対象者(以下、研究協力者)

(1)在宅療養高齢者(以下、在宅療養者)とその家族
在宅療養高齢者の条件を以下に示す。
〈適格条件〉
・65歳以上
・家族と同居している。
・訪問看護サービスを利用している
・食事摂取量が低下注1)しているが、将来的には経口摂取量を改善していきたいと担当の訪問看護師が計画している。
注1)食事摂取量の低下とは、厚生労働省が高齢者の介護予防マニュアルのひとつである「栄養改善マニュアル」(2009)で栄養改善が必要な対象者として挙げている、食事摂取量が不足している者(必要摂取量の75%以下)。または、1~6か月に3%以上の体重減少が認められるまたは、6か月間に2~3kgの体重減少がある者。
〈除外条件〉
・疾患の急性期や終末期にある者。
家族 1)の主介護者であるもの。それぞれの在宅療養高齢者について各1名。

 

(2)訪問看護師

以下の条件を満たす看護師
・上記の条件を満たす在宅療養高齢者を担当している
・食事援助に力を入れている、もしくは今後食事支援を推進していきたいと考えている

 

3.方法

1)介入の枠組み

「食べる」の概念分析(坂下ほか、2013)をもとに、図2のような介入の枠組みを考え実施する。なお、介入は、個別介入(研究協力者ごとに実施していただくもの)と集団介入(訪問看護師の支援能力向上のための講習会)からなる。

 

図2「食」からはじめる生活再構築支援モデルの介入枠組み

 

1)介入案の作成

初回調査は、訪問看護師とともに研究者が研究協力を承諾した在宅療養者宅を訪問し、調査用紙(資料1)に従い、全身状態、食事状況についての情報を得、口腔診査を行う。それらの情報をもとに在宅療養者それぞれの「食」を充実したものにするため研究者が訪問看護師と相談し、介入案を作成する。
介入内容は、以下の(1)から(10)である。介入相手は、在宅療養者と家族(介護者)、サービス提供者である。また、在宅療養高齢者の経過によって具体的な介入の方法が変化するため、それぞれの介入内容について食支援開始期、食支援継続期(安定期)、不安定期に合わせて個別的に介入案を作成することとする(資料2)。 なお、「チームケア」には通常、在宅療養者と家族も含まれるが、在宅療養者と家族に関する介入内容は別に記載しているため、介入内容(10)は、専門職者間について記載している。

 

(1) 食を味わい楽しむ工夫-生活(食)への思い・希望を尊重する支援
a) 食への思い,満足感
b) 習慣

(2) 生活リズムを整える-運動、刺激、人との交流の促進

(3) 全身状態を整える-水分摂取の促進、栄養摂取の支援(資料3)、排泄ケア

(4) 食物、食形態の見直し

(5) 口腔機能向上
a)口の周り:早口言葉、お口の健康体操
b) 咀嚼機能:唾液腺マッサージ、舌のトレーニング
c) 嚥下機能:頭部挙上体操、舌出しゴックン体操、アイスマッサージ

(6) 口腔衛生-口腔清掃、義歯清掃

(7) 食事姿勢の見直し
a) 嚥下に適したポジショニングの調整
b) 寝具や椅子、ポジショニング補助具の調整と活用 

  

(8) 食事介助技術
a) 療養高齢者のペースや好みに合わせ尊重する支援
b) 体調や機能のアセスメント技術
c) 療養者の状態に合わせた食形態の調整
d) コミュニケーション技術
e) 誤嚥を防ぐ食事介助技術

(9) 介護負担の軽減-食事介助に関する介護負担への支援
a) 介護者の心身の健康維持の支援
b) 経済的負担軽減への支援
c) 社会資源活用の調整
d) 介護者の社会的役割と介護負担との調整

(10) チームケアの推進-食支援に関連する専門職者との連携・調整
a) 主治医、歯科医師、耳鼻科医、歯科衛生士、ケアマネジャー、ヘルパー、言語聴覚士、病院看護師(退院調整看護師)、訪問看護師、栄養士、デイサービス・入浴サービスなどのケア提供者との連携
b) 多職種協働、チームケア推進のための調整

 

2)介入案の決定  訪問看護師と研究者がともに在宅療養者を訪問し、1)で作成した介入案を在宅療養者および家族に提案する。主体性を引き出せるよう可能な限り話し合い、また家族と訪問看護師と共に実施可能な方法を検討し、決定する。必要があれば口腔衛生に必要な用具(歯ブラシ、義歯ブラシ、舌ブラシ)は提供する。決定した介入案は、1カ月間、本人および家族、訪問看護師に実行してもらう。決めた内容は紙に書き、研究協力者が日頃目にしやすいところに掲示してもらう。

 

3)訪問看護師への介入

(1)コンサルテーション

1カ月に1回、6カ月間担当訪問看護師と研究者はケース毎にコンサルテーションを行い、問題がある場合にはその改善策を前出した介入内容の範囲で検討する。

 

4.調査項目と収集方法

1) 在宅療養者について

次のデータを初回調査、介入3カ月後調査、介入6カ月後調査時に収集する。

(1)全身状態(資料1:調査用紙)

(2)食事摂取状態
①食事摂取量:3日間の食事記録より1日の平均摂取カロリーを計算する
 水分摂取量:3日間の摂取量を記録してもらう。
②BMI(体重、身長)または体重
③食欲

(3)口腔健康・口腔機能(資料1:口腔検診)
①口腔機能検査(反復唾液嚥下テスト)(才藤, 1996)
②咬合状態等口腔検査

十分な照明のもと、検査者の口腔内を見せていただき、う蝕、処置歯、欠損歯、義歯など歯の状態と歯の汚れ、舌苔、舌機能、咬み合わせ等について調べる。

(4) 意欲:Vitality index(表1)(Toba et al, 2002)

 

2) 在宅療養者へのインタビュー
(1)初回調査では、現在の食事の様子、食事についての希望についてインタビューを行う。
(2)介入3か月後、介入6か月後の調査では、食事について何か変化がみられたか、生活に変化はみられたか、ついてインタビューを行う。

 

3) 在宅療養者の家族へのインタビュー
(1)初回調査では、現在の食事の様子、食事についての希望についてインタビューを行う。
(2)介入3か月後、介入6か月後の調査では、食事について何か変化がみられたか、生活に変化はみられたか、食事の援助でうまくいった点、難しかった点についてインタビューを行う。

 

4)訪問看護師からのモデル評価

 

Abstract from TNMC & WANS International Nursing Research Conference proceeding, 2017.
Development of a life enhancement program for senior home care patients :A study focusing on dining
Introduction: The number of home care patients with difficulties in steady oral intakes due to diseases, aging or other reasons has been increasing.
Objectives: This pilot study aims to develop a life enhancement program focusing on dining for senior home care patients.
Methods: The subjects were home care patients over 65 years who needed nutritional improvement by the criteria (Ministry of Health, Labor and Welfare, Japan, 2007). The program consisted of monthly home visits by a nurse with dentists, dental hygienists, dieticians or physical therapists according to patient's needs for 3 months. The following data were obtained before and three months after the intervention started; 1) nutritional status (caloric intakes and weights), 2) vitality index, 3) oral health conditions (oral diseases, dental plaque and oral functions), and 4) incidents of fever. The human subjects' approval was received from the Institutional Review Board of University of Hyogo.
Results: Subjects were 4 female patients aged from 80 to 91 years old. One had dementia, one was suffered from cerebrovascular disorder, and the other two had physical frailty. After the 3-months care program, caloric intakes (+ 20.3 to 234 Kcal/day) increased in all subjects, and three of them gained their body weights (+1.3 to 5.3 Kg). The degree of appetite and the vitality index of all subjects were promoted. Dental and tongue plaque of three subjects were reduced. There were no incidents of fever during the investigation.
Conclusion: From the findings of this study, this program is suggested to be feasible and to have a possibility to improve nutritional status and vitality of the elderly. Further study is needed to confirm the possibility. This study was supported by KAKENHI (15H05098) from the Japan Society for the Promotion of Science.

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