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過去の科研費研究成果

高齢者・口腔保健・ガイドライン

在宅療養高齢者支援モデルの開発

 

Ⅰ.研究の全体像と本研究の目的

1.研究の全体像

1)在宅療養にて「食」を進めるためのアセスメント・モニタリングシステムの開発
既存技術の改善により、非侵襲的/弱侵襲で簡易な咀嚼嚥下機能を測定する装置を開発し、本装置を軸として、支援者が容易にモニタリングしアセスメントできるシステムを開発する。

2)訪問看護師を対象とした「食」の支援教育プログラムと生活支援モデル案の作成
国内外の関連文献を検討し、「食」を支援する訪問看護師用の教育プログラムを作成する。そして、在宅療養高齢者の「食」に対して先駆的な取り組みをする訪問看護ステーションにつとめる看護師への聞き取り調査から、在宅療養高齢者の生活支援モデル案の作成を行う。

3)以上、1、2の結果から、作成した生活再構築支援モデルの実施・評価を行い、そのモデルの精錬と汎用化の検討を行う。

 

Ⅱ.在宅療養にて「食」を進めるためのアセスメント・モニタリングシステムの開発

咀嚼嚥下運動の鍵を握る舌運動を解明するために顎の複数の筋活動情報を取得し、非侵襲的で簡易な咀嚼嚥下機能を測定する装置を試作した。

 

Ⅲ.訪問看護師を対象とした「食」の支援教育プログラムと生活支援モデル案の作成

1)目的: 超高齢社会の到来に伴って,疾患や加齢等により安定した経口摂取が困難な患者が多くなり,食支援を必要とする 高齢者は急増しているが,在宅ケアの要である訪問看護師が主体的に取り組む食支援に関する研究は少なく,ほとんどが事例報告である。そこで本研究では在宅での生活支援の中で,訪問看護師がどのような食支援を行っているの か,その実際を明らかにするために調査を行った。

2)方法: 食を支援するための具体的な看護実践を明らかにすることを目指しているため,調査対象は食への支援を積極的 に展開している訪問看護ステーションに勤務している訪問看護師とした。この訪問看護師に対して,グループインタ ビューを行った。インタビューデータより食支援の内容を読み取り,類似性に従って分類した。

3)結果および考察:5名の訪問看護師からデータが得られた。生活支援の中での食支援として,食支援を積極的に行っている訪問看護 師は「その人らしく生きる食支援」を行っていた。訪問看護師が行う食支援は【食に対する看護師の思い】を根底に おきつつ,療養者と家族の意思を尊重することを基盤にしてケアを行っていた。そして,在宅ケアの特徴を踏まえて 【高度なアセスメント】【食に対する全人的なケア】【包括的な食支援のための多職種連携】【連続的な評価】という 取り組みを展開していた。

これをうけて、モデル案が作成された。

成果:在宅での生活支援の中で行われる食支援の実際 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要、24、27-41.

 

Ⅳ.「食」を契機とする在宅療養高齢者の生活支援モデル実施

1.本研究の概要

図1に示すように、初回調査を経て情報を収集したのち、調査結果に基づき「食」の改善を主眼としたプログラムを在宅療養高齢者および家族、訪問看護師へ提案し、実施可能な内容を協議した上で3カ月間実施していただく。それらの実施が可能なように介入前、介入1か月後、介入2か月後、計3回訪問看護師を対象とした講習会と、月1回計5回のケース毎にコンサルテーションを行い、問題がある場合にはその改善策を訪問看護師と検討する。介入3カ月後と6カ月後にその効果を1)食事摂取状況、2)口腔機能、3)全身状態、4)活力の点から評価する。

 

図1 研究の概要

 

2.対象および方法

1)対象者(以下、研究協力者)

(1)在宅療養高齢者(以下、在宅療養者)とその家族
在宅療養高齢者の条件を以下に示す。
〈適格条件〉
・65歳以上
・家族と同居している。
・訪問看護サービスを利用している
・食事摂取量が低下注1)しているが、将来的には経口摂取量を改善していきたいと担当の訪問看護師が計画している。
注1)食事摂取量の低下とは、厚生労働省が高齢者の介護予防マニュアルのひとつである「栄養改善マニュアル」(2009)で栄養改善が必要な対象者として挙げている、食事摂取量が不足している者(必要摂取量の75%以下)。または、1~6か月に3%以上の体重減少が認められるまたは、6か月間に2~3kgの体重減少がある者。
〈除外条件〉
・疾患の急性期や終末期にある者。
家族 1)の主介護者であるもの。それぞれの在宅療養高齢者について各1名。

 

(2)訪問看護師

以下の条件を満たす看護師
・上記の条件を満たす在宅療養高齢者を担当している
・食事援助に力を入れている、もしくは今後食事支援を推進していきたいと考えている

 

3.方法

1)介入の枠組み

「食べる」の概念分析(坂下ほか、2013)をもとに、図2のような介入の枠組みを考え実施する。なお、介入は、個別介入(研究協力者ごとに実施していただくもの)と集団介入(訪問看護師の支援能力向上のための講習会)からなる。

 

図2「食」からはじめる生活再構築支援モデルの介入枠組み

 

1)介入案の作成

初回調査は、訪問看護師とともに研究者が研究協力を承諾した在宅療養者宅を訪問し、調査用紙(資料1)に従い、全身状態、食事状況についての情報を得、口腔診査を行う。それらの情報をもとに在宅療養者それぞれの「食」を充実したものにするため研究者が訪問看護師と相談し、介入案を作成する。
介入内容は、以下の(1)から(10)である。介入相手は、在宅療養者と家族(介護者)、サービス提供者である。また、在宅療養高齢者の経過によって具体的な介入の方法が変化するため、それぞれの介入内容について食支援開始期、食支援継続期(安定期)、不安定期に合わせて個別的に介入案を作成することとする(資料2)。 なお、「チームケア」には通常、在宅療養者と家族も含まれるが、在宅療養者と家族に関する介入内容は別に記載しているため、介入内容(10)は、専門職者間について記載している。

 

(1) 食を味わい楽しむ工夫-生活(食)への思い・希望を尊重する支援
a) 食への思い,満足感
b) 習慣

(2) 生活リズムを整える-運動、刺激、人との交流の促進

(3) 全身状態を整える-水分摂取の促進、栄養摂取の支援(資料3)、排泄ケア

(4) 食物、食形態の見直し

(5) 口腔機能向上
a)口の周り:早口言葉、お口の健康体操
b) 咀嚼機能:唾液腺マッサージ、舌のトレーニング
c) 嚥下機能:頭部挙上体操、舌出しゴックン体操、アイスマッサージ

(6) 口腔衛生-口腔清掃、義歯清掃

(7) 食事姿勢の見直し
a) 嚥下に適したポジショニングの調整
b) 寝具や椅子、ポジショニング補助具の調整と活用 

  

(8) 食事介助技術
a) 療養高齢者のペースや好みに合わせ尊重する支援
b) 体調や機能のアセスメント技術
c) 療養者の状態に合わせた食形態の調整
d) コミュニケーション技術
e) 誤嚥を防ぐ食事介助技術

(9) 介護負担の軽減-食事介助に関する介護負担への支援
a) 介護者の心身の健康維持の支援
b) 経済的負担軽減への支援
c) 社会資源活用の調整
d) 介護者の社会的役割と介護負担との調整

(10) チームケアの推進-食支援に関連する専門職者との連携・調整
a) 主治医、歯科医師、耳鼻科医、歯科衛生士、ケアマネジャー、ヘルパー、言語聴覚士、病院看護師(退院調整看護師)、訪問看護師、栄養士、デイサービス・入浴サービスなどのケア提供者との連携
b) 多職種協働、チームケア推進のための調整

 

2)介入案の決定  訪問看護師と研究者がともに在宅療養者を訪問し、1)で作成した介入案を在宅療養者および家族に提案する。主体性を引き出せるよう可能な限り話し合い、また家族と訪問看護師と共に実施可能な方法を検討し、決定する。必要があれば口腔衛生に必要な用具(歯ブラシ、義歯ブラシ、舌ブラシ)は提供する。決定した介入案は、1カ月間、本人および家族、訪問看護師に実行してもらう。決めた内容は紙に書き、研究協力者が日頃目にしやすいところに掲示してもらう。

 

3)訪問看護師への介入

(1)コンサルテーション

1カ月に1回、6カ月間担当訪問看護師と研究者はケース毎にコンサルテーションを行い、問題がある場合にはその改善策を前出した介入内容の範囲で検討する。

 

4.調査項目と収集方法

1) 在宅療養者について

次のデータを初回調査、介入3カ月後調査、介入6カ月後調査時に収集する。

(1)全身状態(資料1:調査用紙)

(2)食事摂取状態
①食事摂取量:3日間の食事記録より1日の平均摂取カロリーを計算する
 水分摂取量:3日間の摂取量を記録してもらう。
②BMI(体重、身長)または体重
③食欲

(3)口腔健康・口腔機能(資料1:口腔検診)
①口腔機能検査(反復唾液嚥下テスト)(才藤, 1996)
②咬合状態等口腔検査

十分な照明のもと、検査者の口腔内を見せていただき、う蝕、処置歯、欠損歯、義歯など歯の状態と歯の汚れ、舌苔、舌機能、咬み合わせ等について調べる。

(4) 意欲:Vitality index(表1)(Toba et al, 2002)

 

2) 在宅療養者へのインタビュー
(1)初回調査では、現在の食事の様子、食事についての希望についてインタビューを行う。
(2)介入3か月後、介入6か月後の調査では、食事について何か変化がみられたか、生活に変化はみられたか、ついてインタビューを行う。

 

3) 在宅療養者の家族へのインタビュー
(1)初回調査では、現在の食事の様子、食事についての希望についてインタビューを行う。
(2)介入3か月後、介入6か月後の調査では、食事について何か変化がみられたか、生活に変化はみられたか、食事の援助でうまくいった点、難しかった点についてインタビューを行う。

 

4)訪問看護師からのモデル評価

 

Abstract from TNMC & WANS International Nursing Research Conference proceeding, 2017.
Development of a life enhancement program for senior home care patients :A study focusing on dining
Introduction: The number of home care patients with difficulties in steady oral intakes due to diseases, aging or other reasons has been increasing.
Objectives: This pilot study aims to develop a life enhancement program focusing on dining for senior home care patients.
Methods: The subjects were home care patients over 65 years who needed nutritional improvement by the criteria (Ministry of Health, Labor and Welfare, Japan, 2007). The program consisted of monthly home visits by a nurse with dentists, dental hygienists, dieticians or physical therapists according to patient's needs for 3 months. The following data were obtained before and three months after the intervention started; 1) nutritional status (caloric intakes and weights), 2) vitality index, 3) oral health conditions (oral diseases, dental plaque and oral functions), and 4) incidents of fever. The human subjects' approval was received from the Institutional Review Board of University of Hyogo.
Results: Subjects were 4 female patients aged from 80 to 91 years old. One had dementia, one was suffered from cerebrovascular disorder, and the other two had physical frailty. After the 3-months care program, caloric intakes (+ 20.3 to 234 Kcal/day) increased in all subjects, and three of them gained their body weights (+1.3 to 5.3 Kg). The degree of appetite and the vitality index of all subjects were promoted. Dental and tongue plaque of three subjects were reduced. There were no incidents of fever during the investigation.
Conclusion: From the findings of this study, this program is suggested to be feasible and to have a possibility to improve nutritional status and vitality of the elderly. Further study is needed to confirm the possibility. This study was supported by KAKENHI (15H05098) from the Japan Society for the Promotion of Science.

 

「食」からはじめる施設入居高齢者の生活再構築支援モデルの開発

 

研究目的

要介護高齢者の増加や介護期間の長期化をうけ、介護保険制度施設入所者は増加している。そこでは集中的な医療は必要ではないが、認知機能の低下など健康問題を持ちながら生活を再構築していく高齢者に対する新たなケアモデルの確立が求められている。本研究においては、生活の構築における「食」の重要性に着目し、「食」の援助を契機に高齢者が主体的に自らの生活を創出できるような支援モデルの開発を目的とする。そのため看護学、介護福祉学、医学、歯学、心理学など、学際的な研究者と協働しモデル開発を行う。研究期間中には、
1.生活再構築支援モデル案の作成、
2.生活再構築支援モデルの試行と評価、
3.生活再構築支援モデルの精錬と汎用化の検討を行う。


研究の全体像

 

研究の概念枠組み

 

研究の全体像

研究の全体像は、以下に示すように、初回調査を経て情報を収集したのち、調査結果に基づき「食」の改善を主眼としたプログラムを入居者・家族・介護者へ提案し、実施可能な内容を協議した上で3カ月間実施していただく。それらの実施が可能なように必要に応じて、入居者・家族・介護者を対象とした研修会を行う。開始1カ月後、2カ月後に食事の状況を伺い、問題がある場合にはその改善策を検討する。3カ月間の介入終了後に効果を評価する。改善が難しかった困難事例に関しては、その後も継続し支援を行う。6カ月後、1年後に効果の評価を行う。

業績
研究発表
・太尾元美,高齢者介護施設において普通食が摂取可能になるまでのプロセスの抽出,平成24年度兵庫県立大学研究発表会,11月(姫路)

・Tao Motomi., Sakashita Reiko,PROCESS TO PROMOTE THE EFFECTIVE INGESTION OF SOLID FOODS FOR THE ELDERLY,The 16th East Asian Forum of Nursing Scholars,February(Bangkok, Thailand)

 

論文
・太尾元美、坂下玲子.高齢者の食形態を普通食へと回復させるためのケアの方略の抽出.兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要.20,2013,41-53.

 

「舌機能に着目した咀嚼嚥下機能向上支援プログラムの開発」

 

1.研究の背景と目的

 1)研究の学術的背景

 舌は、食物の取り込み、食塊の形成、食物の送りこみ等、咀嚼嚥下の準備期、口腔期において中心的な役割を果たすだけではなく、気道と食道の分岐点まで伸び嚥下運動の原動力ともなっており、咀嚼嚥下の鍵をにぎっていると考えている。摂食、嚥下に関する訓練は、間接的訓練、呼吸訓練、直接的訓練など様々なものが実施され(才藤, 1998)、自動運動が難しい方には、舌機能回復のために舌マッサージなどが行われている(岡田, 2010)。しかし舌マッサージの方法に関しては学術的に十分に検討されていない現状であり、他動的マッサージは対象者に不快感を与え嫌がられることも多く、またその効果は十分に検証されていない。研究者らは対象者が心地よいと感じる舌マッサージを実施すると喜んで受け入れてもらえ、舌の拘縮がとれ柔軟になり、それを継続することによって舌機能が向上し、経口摂取が進む事例を多く経験している。そこで、本研究では、高齢者を対象とし、対象者が心地よいと感じ、積極的に参加できる舌マッサージを開発し、舌機能に着目した咀嚼嚥下機能向上支援プログラムの開発することを目的とする。

 2)研究期間内に明らかにしようとする点

 ①咀嚼嚥下障害をもつ高齢者の舌運動の特徴の分析と舌機能評価方法の検討
 ②効果的な舌マッサージ法の開発
 ③舌機能向上に焦点をあてた咀嚼嚥下機能向上支援プログラムの構築
 ④予備調査の後、開発したプログラムの修正および実施
 ⑤プログラムの評価と精錬 を行う予定である。

 本研究期間内においては、咀嚼嚥下障害の問題をもつ者が多い特別養護老人ホーム等施設入居高齢者を対象として研究を進めるが、そこで開発されたプログラムは入院または在宅で障害を持つ人々へも適応することが可能であると考えられる。

<文献>
才藤栄一(1998)老年者の摂食・嚥下障害の評価法と訓練の実際,歯界展望,91(3), 649-656. 岡田澄子 (2010)精度の高い咀嚼嚥下訓練を目指して, 言語聴覚研究, 7(1), 25-30. Longemann LA (1998)Evaluation and treatment of swallowing disorders, 2nded., PRO-ED.

 

2.研究成果

 1)舌機能評価に関する文献レビュー

 医学中央雑誌Web Ver.4にて「舌and機能」をキーワードとし、対象を原著または解説に絞り込み、1983~2011年(全年)の文献を検索した結果、105件の文献が抽出された。抽出された105件の文献のうち、所蔵が確認できず、取り寄せできなかった3件を除く102件の文献において文献レビューを行った。
 文献内容を検討し、「口腔機能評価の開発・検討」「システムの開発や改良における検討」「訓練法・プログラムの開発・検討」「解剖」「加齢に伴う変化」の5つのテーマに分類した。口腔機能評価の開発・検討に関しては、以下のように分類された(表3-1参照)。

 

表3-1 摂食・嚥下機能評価法の分類

分類摂食・嚥下機能評価
機器を必要としない検査法
  • (1) 問診
  • (2) 視診および触診
  • (3) 声、呼吸音の聴診
  • (4) 栄養アセスメント
  • (5) 喉頭挙上度検査
  • (6) 反復唾液嚥下テスト(repetitive saliva swallowing test:RSST)
  • (7) 氷砕片飲み込み検査(ice chip swallow test)
  • (8) 改訂水飲み検査(Modified water swallow test:MWST)
  • (9) フードテスト(Food test:FT)
  • (10) 2段階簡易嚥下誘発試験(Simple two-step swallowing provocation test:S-SPT)
  • (11) ドライマウス評価法
  • (12) 咀嚼能力
  • (13) 舌機能検査(Tongue Habit Test:THテスト)
  • (14) パラトグラム法
  • (15) 特定の疾患における評価
  • (16) 頸部聴診法
機器を必要としない検査法
  • (17) 嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing:VF検査)
  • (18) 嚥下内視鏡検査(videoendoscopic examination of swallowing:VE検査)
  • (19)筋電図
  • (20) 舌圧
  • (21)超音波診断装置

 

2)文献検討および専門家らの討議により、舌機能を評価する簡易スケールを策定した。現在、施行中であり、今後、他の評価法との関連を検討する予定である。

「高齢者の口腔・摂食機能向上を促す地域支援ヘルスプロモーションモデルの構築」

 

【研究組織】

研究責任者
坂下 玲子(兵庫県立大学 看護学部)
研究分担者
松下 健二(国立長寿医療センター研究所・口腔疾患研究部)
加治 秀介(兵庫県立大学 看護学部)
佐藤 拓一(東北大学大学院歯学研究科)
金 外淑(兵庫県立大学 看護学部)
新井 香奈子(兵庫県立大学 看護学部)
三重 幸恵(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
荒川 満枝(大分大学 医学部)
松尾 和枝(日本赤十字九州国際看護大学)
研究協力者
安彦 友希(東北大学大学院歯学研究科)
井上 昌一(鹿児島大学名誉教授)
小河 宏行(明石市開業)
上手 道子(兵庫県歯科衛生士会)
桑原 未代子
瀧本 尚美(石原歯科)
川口 真理子(神戸大学医学部附属病院)
濱田 三作男
(特別養護老人ホーム ラヴィータウーノ)
山川 達也(明石市開業)
渡邊 佳世
岩崎 百合子(兵庫県歯科衛生士会)
大塚 久美子
岸本 啓子(兵庫県歯科衛生士会)
衣笠 瑞子(兵庫県歯科衛生士会)
太尾元美(兵庫県立大学 看護学部)

永坂美晴(望海在宅介護支援センター・ライフ明海)

西平 倫子
西谷 美保
藤田 頼子(兵庫県歯科衛生士会)
藤本 愛明(看大つどい会)
物部 弘子(兵庫県歯科衛生士会)
矢口 隆啓(看大つどい会)

 

【目的】

 高齢者を対象としたセルフマネージメント力の育成を目指した「お口からはじめる健康プログラム」を実施し、プログラムの効果と継続性に関して評価する。

【研究方法】

 地域で生活する60歳以上の者を対象とし、集団体験学習と個別相談から成る月1回、3回の介入を実施した。
<支援プログラム>
 口腔・摂食機能は全身の健康、栄養状態、発音等に影響しQOLに深く関わっている。また最近では認知症との関連も報告されている10)。そこで、本研究では研究者らの討議を通じて図1に示したように、口腔健康の向上とともにQOLおよび認知機能の向上をアウトカムと考えた。

 

研究の枠組み

 

 プログラムは、集団を対象とした介入と個別相談からなる。集団体験学習のテーマは1)口腔健康状態の見方と口腔ケアの演習、2)口腔機能の見方と口腔体操、唾液腺マッサージの演習、3)口腔ケア継続の工夫や秘訣であった。個別相談に関しては、図2に示す方略を用い、対象者が気になることから働きかけていった。

 

介入の方略

 

<評価指標>
 介入の成果として、介入開始前、介入終了後、介入終了3カ月後で以下の点を検討した。1)セルフケア行動、2)口腔診査(う蝕、義歯、CPI、汚れ、歯石等)2)口腔機能検査(反復唾液嚥下テスト、オーラルディアドコキネシス等)、4)QOL(SF-8v2™、GOHAI)5)認知機能(MMSE-J)。なお、本研究は研究者の所属組織の研究倫理委員会の承認を受けて行われた。
【A地区調査結果】
 対象者は60歳以上の男女合計31名(男性6名、女性25名)、平均年齢は73.1±7.4歳(61~94歳)であった。介入後の評価では、23人の、介入後3カ月後では 26人のデータが採取された。

  • 1)口腔セルフケア行動:介入前と比較して、介入後は歯みがき回数やデンタルフロスの使用頻度が有意に多くなり、介入後3カ月後も継続されていた。介入後、65%は、歯科受診していた。
  • 2)口腔疾患および口腔機能:汚れと歯石においては、介入前と介入後3カ月後で差がみられ、介入後3カ月後では有意に減っていた(p<0.01~0.001)。口腔機能に関しては有意な変化はみられなかった。
    3)QOL:介入前と介入後3カ月の間で有意な差がみられ、QOLは改善していた(<0.05)。認知機能:認知機能に関しては、改善がみられ、特に介入前と介入後では有意な差を示した(図3参照 P<0.05)。

    以上のように、本プログラムはセルフケア行動を促進し、口腔健康を高め、全身のQOLや認知機能を高めることが示唆された。

 

 

【業績】

「高齢者の口腔・摂食機能向上を促す地域支援ヘルスプロモーションモデルの構築」の研究業績を示します。

【論文発表】
Abiko Y, Sato T, Mayanagi G and Takahashi N: Profiling of subgingival plaque biofilm microflora from periodontally healthy subjects and from subjects with periodontitis using quantitative real-time PCR. J Periodontal Res 45(3): 389-395, 2010. June

Thaweboon B, Laohapand P, Amornchat C, Matsuyama J, Sato T, Nunez PP, Uematsu H and Hoshino E: Host β-globin-gene fragments of crevicular fluid as a biomarker in periodontal health and disease. J Periodontal Res 45(1): 38-44, 2010. February

Masaki M, Sato T, Sugawara Y, Sasano T and Takahashi N: Detection and identification of non-Candida albicans species in human oral lichen planus. Microbiol Immunol 55(1): 66-70, 2011. January

 

坂下玲子渡邉佳世西平倫子新井香奈子松下健二山川達也小河宏行永坂美晴濱田三作男:A地域における高齢者の口腔・摂食機能向上を促す支援プログラムの検討. 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要, 18, 2011.


【Proceedings】

Abiko Y, Sato T, Matsushita K, Sakashita R and Takahashi N: Porphyromonas gingivalis is widely distributed in subgingival plaque biofilm of elderly people. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 240-242, 2010. May


Matsuyama J, Sato T, Abiko Y, Kato K and Hoshino E: Real-time PCR analysis of cariogenic bacteria in supragingival plaque biofilm microflora on caries lesions of children. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 271-272, 2010. May


Sato T, Hoshikawa Y, Kondo T, Hashimoto K, Abiko Y, Hasegawa A, Matsuyama J and Takahashi N: Involvement of cough reflex impairment and silent aspiration of oral bacteria in postoperative pneumonia: A model of aspiration pneumonia. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 273-274, 2010. May


Sakashita R, Otsuka K, Sato T, Watanabe K, Kamide M, Takimoto N, Kawaguchi M and Nishihira T: Can symptom awareness of the elderly be a clue to find oral diseases and promote oral health behavior? In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 346-348, 2010. May

【特別講演】
佐藤拓一安彦友希,長谷川彩子,真柳 弦,鷲尾純平,中條和子,堀(宮澤)はるみ, 橋信博:口腔フローラのプロファイリング.第58回東北大学歯学会(仙台),2010年12月10日,東北大歯誌30(1): in press, 2011.

【国際学会発表】

Hasegawa A, Sato T, Hoshikawa Y, Abiko Y, Kondo T and Takahashi N: Silent aspiration of oral bacteria in elderly subjects. The 88th IADR (Barcelona, Spain), July 17, 2010, J Dent Res 89(Special Issue B): 4291, 2010.

Arai K, Kajiwara, R., Tagawa,Y, Koeda M, Nagasaka M, Yamakawa T, Ogawa H, Kaji H, and Sakashita R: Promoting Oral Health among the elderly, 2nd Japan China Korea Nursing Conference(Tokyo, Japan), Nov.20-22, 2010.


Abiko Y, Sato T, Sakashita R and Takahashi N: Subgingival plaque biofilm microflora of elderly subjects: quantitative analysis of Porphyromonas gingivalis and genotyping of its virulence-associated fimA. The 4th International Symposium for Interface Oral Health Science (Sendai), 7-8 March, 2011, Program and Abstracts of the International Symposium for Interface Oral Health Science, in press, 2011.


Nishihira T, Nishitani M, Sato T, Abiko Y, Matsushita K, Hamada M and Sakashita R): Community oral health promotion program fostering self-management for elderly people. The 4th International Symposium for Interface Oral Health Science (Sendai), 7-8 March, 2011, Program and Abstracts of the International Symposium for Interface Oral Health Science, in press, 2011.


Abiko Y, Sato T, Sakashita R and Takahashi N:Porphyromonas gingivalisquantification and fimA-genotyping in plaque of the elderly. The 89th IADR (San Diego, USA), March 18, 2011, J Dent Res 90(Special Issue B): in press, 2011.


【国内学会発表】

シンポジウム
金 外淑、松下健二、永坂美晴、坂下玲子:オーラルヘルスプロモーションのこれから:口腔健康行動におけるコミュニティチーム医療、第23回日本健康心理学会、9月11、12日、2010.

 

「高齢者の口腔・摂食機能向上を促す地域支援ヘルスプロモーションモデルの構築」

 

【論文発表】

Sato T, Yamaki K, Ishida N, Hashimoto K, Takeuchi Y, Shoji M, Sato E, Matsuyama J, Shimauchi H, Takahashi N: Cultivable anaerobic microbiota of infected root canals. Int J Dent 2012 (Special Issue “Contemporary Endodontic Treatment”), in press, 2012. July

Komori R, Sato T, Takano-Yamamoto T, Takahashi N: Microbial composition and acidogenic potential of dental plaque microflora on first molars with orthodontic bands and brackets. J Oral Biosci 55(2): in press, 2012. May

Sato T, Kenmotsu S, Nakakura-Ohshima K, Takahashi N, Ohshima H: Responses of infected dental pulp to αTCP containing antimicrobials in rat molars. Arch Histol Cytol 75: in press, 2012.

Takeuchi Y, Nakajo K, Sato T, Koyama S, Sasaki K, Takahashi N: Quantification and identification of bacteria in acrylic resin denture bases and dento-maxillary obturator-prostheses. Am J Dent 25: in press, 2012.

Ito Y, Sato T, Yamaki K, Mayanagi G, Hashimoto K, Shimauchi H, Takahashi N: Microflora profiling of infected root canal before and after treatment using culture-independent methods. J Microbiol 50(1): in press, 2012. February

Hashimoto K, Sato T, Shimauchi H, Takahashi N: Profiling of dental plaque microflora on root caries lesions and the protein-denaturing activity of these bacteria. Am J Dent 24(5): 295-299, 2011. October

Abiko Y, Sato T, Mayanagi G and Takahashi N: Profiling of subgingival plaque biofilm microflora from periodontally healthy subjects and from subjects with periodontitis using quantitative real-time PCR. J Periodontal Res 45(3): 389-395, 2010. June

Thaweboon B, Laohapand P, Amornchat C, Matsuyama J, Sato T, Nunez PP, Uematsu H and Hoshino E: Host β-globin-gene fragments of crevicular fluid as a biomarker in periodontal health and disease. J Periodontal Res 45(1): 38-44, 2010. February

>Masaki M, Sato T, Sugawara Y, Sasano T and Takahashi N: Detection and identification of non-Candida albicans species in human oral lichen planus. Microbiol Immunol 55(1): 66-70, 2011. January

坂下玲子,渡邉佳世,西平倫子,新井香奈子,松下健二,山川達也,小河宏行,永坂美晴,濱田三作男: A地域における高齢者の口腔・摂食機能向上を促す支援プログラムの検討. 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要, 18, 2011

石川 正夫,山崎 洋治,石川 文子,島田 睦,田中 良子,森嶋 清二,石井 孝典,高田 康二,渋谷 耕司,坂下 玲子,濱田三作男:唾液中アンモニアの高齢者における口腔内細菌数評価への応用. 老年歯科医学,25(4):367‐374,2011.

新井香奈子,坂下玲子,上手道子,岩崎小百合,物部弘子,岸本啓子,藤田頼子,衣笠端子:口腔機能向上を促す支援プログラムによる高齢者の口腔保健行動の変化. 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要, 18, 2012. in press.

【Proceedings】

Abiko Y, Sato T, Sakashita R, Takahashi N: Subgingival plaque biofilm microflora of elderly subjects: quantitative analysis of Porphyromonas gingivalis and genotyping of its virulence-associated fimA. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 176-177, 2012. February

Hasegawa A, Sato T, Hoshikawa Y, Kondo T, Takahashi N: Silent aspiration of oral bacteria – Microbiological analysis of intraoperative bronchial fluids from patients with pulmonary carcinoma. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 181-182, 2012. February

Kato K, Tamura K, Nakagaki H, Sakakibara S, Ou Y, Matsumoto S, Fujita K, Sato T: A method for quantitatively evaluating plaque biofilm removing capacity of a dental water jet using EPMA. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 186-188, 2012. February

Takeuchi Y, Nakajo K, Sato T, Sakuma Y, Koyama S, Sasaki K, Takahashi N: Quantification and identification of bacteria in the maxillary obturator-prostheses. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 209-211, 2012. February

Yamaki K, Sato T, Hasegawa A, Abiko Y, Hashimoto K, Takeuchi Y, Matsuyama J, Shimauchi H, Takahashi N: Change in infected root canal microflora during the course of root canal therapy. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 221-222, 2012. February

Nishihira T, Nishitani M, Sato T, Abiko Y, Matsushita K, Hamada M, Sakashita R: Community oral health promotion program fostering self-management for elderly people. In: Interface Oral Health Science 2011, Springer, New York, 317-319, 2012. February

Abiko Y, Sato T, Matsushita K, Sakashita R and Takahashi N: Porphyromonas gingivalis is widely distributed in subgingival plaque biofilm of elderly people. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 240-242, 2010. May

Matsuyama J, Sato T, Abiko Y, Kato K and Hoshino E: Real-time PCR analysis of cariogenic bacteria in supragingival plaque biofilm microflora on caries lesions of children. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 271-272, 2010. May

Sato T, Hoshikawa Y, Kondo T, Hashimoto K, Abiko Y, Hasegawa A, Matsuyama J and Takahashi N: Involvement of cough reflex impairment and silent aspiration of oral bacteria in postoperative pneumonia: A model of aspiration pneumonia. In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 273-274, 2010. May

Sakashita R, Otsuka K, Sato T, Watanabe K, Kamide M, Takimoto N, Kawaguchi M and Nishihira T: Can symptom awareness of the elderly be a clue to find oral diseases and promote oral health behavior? In: T. Sasano and O. Suzuki (eds.) Interface Oral Health Science 2009, Springer, New York, 346-348, 2010. May

【特別講演

佐藤拓一,安彦友希,長谷川彩子,真柳 弦,鷲尾純平,中條和子,堀(宮澤)はるみ, 高橋信博:口腔フローラのプロファイリング.第58回東北大学歯学会(仙台),2010年12月10日,東北大歯誌30(1): in press, 2011.

【国際学会発表】

Hasegawa A, Sato T, Hoshikawa Y, Abiko Y, Kondo T and Takahashi N: Silent aspiration of oral bacteria in elderly subjects. The 88th IADR (Barcelona, Spain), July 17, 2010, J Dent Res 89(Special Issue B): 4291, 2010.

Arai K, Kajiwara R., Tagawa Y, Koeda M, Nagasaka M, Yamakawa T, Ogawa H, Kaji H, and Sakashita R: Promoting Oral Health among the elderly, 2nd Japan China Korea Nursing Conference, (Tokyo, Japan), Nov.20-22, 2010.

Abiko Y, Sato T, Sakashita R and Takahashi N: Subgingival plaque biofilm microflora of elderly subjects: quantitative analysis of Porphyromonas gingivalis and genotyping of its virulence-associated fimA. The 4th International Symposium for Interface Oral Health Science (Sendai), 7-8 March, 2011, Program and Abstracts of the International Symposium for Interface Oral Health Science, in press, 2011.

Nishihira T, Nishitani M, Sato T, Abiko Y, Matsushita K, Hamada M and Sakashita R: Community oral health promotion program fostering self-management for elderly people. The 4th International Symposium for Interface Oral Health Science (Sendai), 7-8 March, 2011, Program and Abstracts of the International Symposium for Interface Oral Health Science, in press, 2011.

Abiko Y, Sato T, Sakashita R and Takahashi N: Porphyromonas gingivalis quantification and fimA-genotyping in plaque of the elderly. The 89th IADR (San Diego, USA), March 18, 2011, J Dent Res 90(Special Issue B): in press, 2011.

Sakashita R., Watanabe K., Hamada M., Matsushita K., Nishitani M., Nishihira T.: A Multidisplinary Community Care Program Focusing on Oral Health. ICN Conference 2011,(Marta), May 2-8, 2011.

Arai K, Sakashita R and Kamide M.: Effects of a community support program in oral health for the elderly. International conferences in community health care nursing research.(ICCHNR) Symposium (Edmonton, Canada), May 4-6, 2011.

【国内学会発表】

シンポジウム
金 外淑,松下健二,永坂美晴,坂下玲子:オーラルヘルスプロモーションのこれから:口腔健康行動におけるコミュニティチーム医療,第23回日本健康心理学会,9月11,12日,2010.

佐藤拓一,河村好章,八巻惠子,島内英俊,高橋信博:感染根管内細菌叢のpyrosequencing法によるメタゲノム解析.第53回歯科基礎医学会学術大会(岐阜),2011年10月1日,J Oral Biosci 53(S): 106, 2011.

安彦友希,佐藤拓一,坂下玲子,高橋信博:高齢者の歯肉縁下プラーク細菌叢:Porphyromonas gingivalis の定量解析とfimA 遺伝子型タイピング.第53回歯科基礎医学会学術大会(岐阜),2011年10月2日,J Oral Biosci 53(S): 204, 2011.

坂下玲子,太尾元美,新井香奈子,西平倫子,西谷美保: 地域で生活する高齢者を対象とした「お口からはじめる健康プログラム」の検討(高知),第31回看護科学学会学術集会,2011年12月2,3日

 

「高齢者にとって望ましい口腔保健行動の検討とガイドラインの作成」

 

【目的】

本研究は、個々の高齢者の身体的、心理的、社会的側面を考慮しながら、各自にあった適切な口腔保健行動を行なえるような健康行動学習プログラムを作成し、高齢者の口腔保健行動を支援することを最終目的としているが、本研究課題の範囲では、良好な口腔状態保持者の質的研究を通じ様々な口腔保健行動を抽出し、抽出項目を用いて量的研究を行うことにより各行動の口腔健康における役割を評価し、高齢者にとって望ましい口腔保健行動を検討することを目的とした。

【結果】

1.様々な口腔保健行動の抽出(質的研究)

 高齢になっても健全な口腔状態を保つ者など、地域で生活する60歳以上の者94人(男性52人、女性42人)を対象に口腔保健行動に関しての半構成的面接を行い、口腔保健行動の要素を抽出した。口腔保健行動の背景として、口腔健康への認識は重要だと考えられたので、認知的変数測定のための質問票の開発を行なった(大塚ほか、2008)。これら認知的変数は最終的に<ホジティブな信念><口腔健康へのあきらめ><口腔健康への自信><アドヘレンス><口腔の困難な問題の認識>の因子からなると考えられた。これらの研究の結果、質問票が作成された(坂下ほか、2008)。

 

2.各口腔保健行動の評価(多数例による量的研究)
 地域で生活する60歳以上の者 460人(男性147人、女性313人)を対象に調査を実施した。口腔保健行動要素を独立変数に、全身状態を影響因子、口腔状態を従属変数として多変量解析を行い各口腔保健行動が口腔健康に及ぼす影響を評価した。その結果、以下に関する保健行動が口腔の健康にとって有効であると考えられた。
①口腔清掃行動(強い効果)
 ・歯間ブラシ・デンタルフロスの頻回な使用
 ・歯みがき時間を充分にとる
 ・硬めの歯ブラシを使う
 ・就寝前の歯みがき
②受診行動(中程度の効果)
 ・定期的な歯科受診
 ・定期的なブラッシング指導の受講
③喫煙していない(歯周病に対して中程度の効果)
④食生活(歯周病に対しての弱い効果)
 ・栄養バランスに気をつける
 ・甘いもの・間食を控える
 ・お茶、紅茶をよく飲む

 

3.口腔保健行動を推進する要因の検討
 上記の研究から得られた結果を総合的に分析することにより、高齢者の口腔保健行動を促進するアプローチを検討した。
 主訴や自覚症状と疾患の関連を検討したところ(坂下ほか、2009)、自覚症状をもつ人は、未処置齲歯、歯周病、欠損歯のリスクが有意に高く(p<0.01~p<0.05)、自覚症状を手がかりとして口腔の問題に対処することは有意義であると考えられた。参加者の75.2%(345人)は、何らかの自覚症状をもっていたにもかかわらず、55.7%(192人)はそれらを口腔の困った問題としては捉えていなかった。また、年齢が上昇するにつれ、主訴や自覚症状をもつ人の割合は減少する傾向にあり、口腔乾燥、口臭といった項目は女性の方が自覚しやすい傾向にあった。主訴や自覚症状があるものは、口腔清掃をよく実施していたが(p<0.05)、自覚症状がある人は口腔疾患のリスクが高いにもかかわらず、歯科受診に対して消極的な回答をした人が多かった(p<0.05)。
 口腔清掃を促進する要因として、<ホジティブな信念><アドヘレンス><口腔健康への自信>などがあり、年齢、高血圧などの身体状態は抑制要因として考えられた。受診行動を促進するものとしても<ホジティブな信念><アドヘレンス><口腔健康への自信>などの認知的変数が認められた。
 本研究においては、ガイドラインの作成を目標に高齢者に適した口腔保健行動の検討を行った。本研究を通じて、疾患の脅威を示す健康教育には限界があり、口腔健康に関してのホジティブな信念を育成する働きかけ、口腔健康への自信がもてるような援助が重要であることが示唆された。好ましい口腔保健行動を援助するためには、年齢や性別などの特性を考慮しながら、どのような要因が口腔保健行動を推進するのか、今後は経時的な研究を行ない詳細に検討していく必要があると考えられた。

 

【業績】

平成18年度~20年度「高齢者にとって望ましい口腔保健行動の検討とガイドライン」の研究業績を示します。

【論文】
1) Abiko Y, Sato T, Mayanagi G and Takahashi N: Profiling of subgingival plaque biofilm microflora of healthy and periodontitis subjects by real-time PCR. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 213-218, 2007.

2) Sato T, Abiko Y, Mayanagi G, Matsuyama J and Takahashi N: Detection of periodontopathic bacteria in periodontal pockets by nested polymerase chain reaction. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 267-268, 2007.

3) Sato T, Matsuyama J, Mayanagi G, Abiko Y, Kato K and Takahashi N: Nested PCR for the sensitive detection of cariogenic bacteria. Cariology Today 3-4, pp. 17-20, 2007.

4) Sato R, Sato T, Takahashi I, Sugawara J and Takahashi N: Profiling of bacterial flora in crevices around titanium orthodontic anchor plates. Clin Oral Implants Res 18(1), pp. 21-26, 2007.

5)Ito Y, Sato T, Mayanagi G, Yamaki K, Shimauchi H and Takahashi N: Microflora profiling of root canal utilizing real-time PCR and cloning-sequence analyses based on 16S rRNA genes -Differences between before and after root canal treatments-. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 265-266, 2007.

6)Masaki M, Sato T, Sugawara Y, Sasano T and Takahashi N: Candida species as members of oral microflora in oral lichen planus. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 273-274, 2007.

7)Matsuyama J, Sato T, Takahashi N, Sato M and Hoshino E: Real-time PCR analysis of genera Veillonella and Streptococcus in healthy supragingival plaque biofilm microflora of children. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 255-256, 2007.

8)Kato K, Tamura K, Sato T and Nakagaki H: Influence of yogurt products containing Lactobacillus reuteri on distributions of mutans streptococci within dental plaque. In: Interface Oral Health Science 2007, Springer, Tokyo, pp. 259-260, 2007.

9) Thaweboon B, Laohapand P, Amornchat C, Matsuyama J, Sato T, Nunez PP, Uematsu H and Hoshino E: Host β-globin-gene fragments of crevicular fluid as a biomarker in periodontal health and disease.
J Periodontal Res 44: in press, 2009.

10) 坂下玲子、大塚久美子、新井香奈子、加治秀介:高齢者にとっての望ましい口腔保健行動の検討― 第一次調査結果.兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要、15、pp. 83-92、2008.
11) 大塚久美子、金外淑、西平倫子、坂下玲子:高齢者口腔保健行動に関する認知的変数測定のための質問票作成.兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要、15、pp. 107-118、2008.

12) 坂下玲子、大塚久美子、渡邉佳世、上手道子、瀧本尚美、川口真理子、西平倫子:高齢者の口腔保健行動を促すための自覚症状と口腔疾患の関連の検討.兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要、16、pp. 1-11、2009.

13) 新井香奈子、坂下玲子:口腔保健行動に関する研究調査へ参加した高齢者の口腔内状況と背景.兵庫県立大学地域ケア開発研究所研究活動報告集  Vol3 (in press).

14) 瀧本尚美、上手道子:高齢者の口腔衛生指導に対する要望と口腔状況. 歯科衛生学雑誌(投稿中)

【学会発表】
1) Y. Abiko, T. Sato, K. Matsushita, R. Sakashita, N. Takahashi: Presence of Porphyromonas gingivalis in Subgingival Plaque Biofilm of Elderly People. 第86回IADR(Toronto, Canada) 2008年7月2-5日, J Dent Res 87 (Special Issue B): in press, abstract # , 2008.

2) Takeuchi Y, Nakajo K, Sato T, Sakuma Y, Sasaki K and Takahashi N: Quantification and identification of bacteria within acrylic resin denture bases. The 86 th IADR (Toronto, Canada), 3 July, 2008, J Dent Res 87 (Special Issue B): abstract #1319, 2008.

3) Abiko Y, Sato T, Matsushita K, Sakashita R and Takahashi N: Porphyromonas gingivalis is widely distributed in subgingival plaque biofilm of elderly people. The 3rd International Symposium for Interface Oral Health Science(Sendai), 15-16 January, 2009. Program and Abstracts of the International Symposium for Interface. Oral Health Science, p. 67 (abstract# P55).

4) Sakashita R, Ostuka K, Sato T, Watanabe K, Kamide M, Takimoto N, Kawaguchi M and Nishihira T: Can symptom awareness of the elderly be a clue to find oral diseases and promote oral health behavior?
The 3rd International Symposium for Interface Oral Health Science(Sendai), 15-16 January, 2009.
Program and Abstracts of the International Symposium for Interface Oral Health Science, p. 90 (abstract# P97).

5) Reiko Sakashita, Kumiko Ostuka, Kumiko Torigai, Kanako Tarumoto, Uda E: The promotion of effective oral health behaviors among the elderly. The 1st International Nursing Research Conference of World Academy of Nursing Science (Kobe), 19-20 September, 2009 (Accepted).

6) 安彦友希、佐藤拓一、松下健二、高橋信博:高齢者の歯肉縁下プラークバイオフィルムにおける歯周病関連菌の存在、第49回歯科基礎医学会学術大会(札幌)、 2007年8月30日
J Oral Biosci 49(S): 126, 2007. (Abstract #P-71)

7) 坂下玲子、大塚久美子、西平倫子、鶴岡真理子:地域で生活する60歳以上の住民の口腔に関する自覚症状と口腔疾患の関連、第34回日本看護研究学会(神戸)、2008年7月20-21日 

8)坂下 玲子,新井香奈子:高齢者の口腔保健行動に関する認知的変数と口腔保健行動および口腔健康状態の関連.第28回日本看護科学学会学術集会(福岡),12月

 

【論説】

1)坂下 玲子:Effectiveness researchの確立に向けて.医学書院出版、看護研究41、pp. 469-47
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