私達が調査した結果(坂下ほか、2008)からは、以下のような口腔相談のヒントが抽出されました。参考にしていただけたら幸いです。
I.導入
1.招き入れる
2.信頼関係を築く
3.機が熟すのを待つ
Ⅱ.相談
1.真の問題を見つける
2.問題点を理解してもらう
3.出来ることを一緒に探す
4.行動を引き起こす
5.行動の継続を促す
Ⅲ.今後へ繋ぐ
1.相談の継続を促す
以下、相手とは相談や指導などの援助を必要とされている方を指します。
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Ⅰ.導入
本題に入る前に相手との関係性を築き、相手が思っていることを表出しやすい環境を整えるため以下のような方略がある。
1.招き入れる
笑顔で挨拶する、やわらかく声をかける、日常的な会話や話題で相手をほぐす、相談に来られた勇気をたたえる、適切な距離を保ち、プライバシーが守れる環境をつくるなど、相手を受け入れ、リラックスさせ話しやすい環境をつくる。
2.信頼関係を築く
気づかう、じっくり話しを聞く、人として尊重するなど、相手を人間として尊重し、またこの人なら相談してもらってもよいと受け入れてもらうことによって関係性を築いていく。信頼関係を築かないことには本音を話してはもらえない。
3.機が熟すのを待つ
相手が相談する気持ちになるのを待つことと相談役である援助者が、さりげない会話を通じて必要な情報収集を行うことによって、相手と援助者双方が本題に入る準備が整うのを待つ。
Ⅱ.相談
1.真の問題を見つける
解決すべき問題は主訴と異なることが多いので、相手の訴えを傾聴しながら、実際に口の状態を見せていただき、真の問題を探る。
2.問題点を理解してもらう
相手に真の自分の問題点を理解してもらうために、自分の口の状況をみてもらい実感してもらうこと、症状の意味を理解してもらうこと、専門的な知識を使い納得されるまで説明すること、パンフレットや視覚的なツールを利用すること、問題点と予後をはっきり告げること、適切な例えをするというやり方もある。
3.出来ることを一緒に探す
専門家の治療やケアが必要か見極めた上で、必要であれば受診を勧める。相手の希望、相手の状況に添って出来ることを一緒に探していくことは大切であり、生活を振り返ってもらい、出来そうなことを一緒に探すことは効果的である。その人だけが特別でないことを伝え身近な例を示してはげますことも効を奏すことがある。
4.行動を引き起こす
相手にやる気になってもらい行動の後押しをするために、希望の火をともす、歯の大切さを伝える、援助することを保証する、押したり引いたりする、自分の健康は自分で守る自覚を促す、経過の予測を伝える、できることを1つだけ約束する、感情を使って伝える、具体的な目標を決める、実行している身近なモデルを示す、歯科医とのコミュニケーションを助けるなど多くの方略がある。 5.行動の継続を促す
保健行動を継続できるように援助するため、相手の努力をほめる、何度も何度もくり返し伝える、成果を実感してもらうなどの方略が抽出された。
Ⅲ.今後へ繋ぐ
1回の相談や指導で意識や行動を変えるのは難しいため、次回の約束をするなど、継続して来てくれるようにすることは大切である。
<文献>坂下 玲子, 大塚 久美子:高齢者の口腔ケア支援に関する相談技術の抽出.兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要,15:93-105, 2008.